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田中一村に魅せられて [アート]

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田中一村を知ったのは、20年近く前のことです。
愛知美術館で「田中一村展」がありそれを「日曜美術館」で取り上げた時でした。

ある日曜日の朝、いつものように「日曜美術館」を観ていました。その当時ギャラリーを始めたばかりだった私はアートの知識もデザインの知識もほとんどなく勉強のつもりでその番組を観ていました。そんなときです、「田中一村」に出会ったのは。
日本画というだけでは当時の私は全く心に引っかからなかったのですが、日本画だというその作品群はそれまで観て来た日本画の概念とは違ったビジュアルでした。だから日本画の「田中一村展」というだけではこの展覧会を観ることはなかったかもしれません。

2001年、「田中一村記念美術館」ができました。
これで当地に行ったらいつでもまとめて一村作品を観ることができると思ったのと同時に、もうまとめて観せる「田中一村展」というものは近くで観ることはできないなとも思いました。
それならいつか一村の制作の地である奄美にいつか行きたいと思うようになりました。

この度やっとその思いが叶うことになりました。

実物の一村作品の最初の出会いはどうだったか。それはもうテレビで見てあってもショッキングな作品でした。強烈な形や色は南国そのもの。日本画はそもそも日本の花鳥風月が基本だからそんな形や色にはならなかったのだから。
南国の植物をメインモチーフに制作していた一村。

「田中一村記念美術館」は一村の少年期、千葉時代、奄美時代、襖絵などの大作の4つの部屋に分かれています。言うまでもなく奄美時代が何と言っても圧巻です。

「アダン」という植物を初めて知ったのも一村の作品からだった。「アダン」の作品は切手にもなったので知っている人は多いと思う。鋭角の葉っぱに固そうな実で形作られた丸い実のバランスはエキゾチックと言う以上に今まで見たことのない不思議な植物。それが極彩色ではない静かな南国の色を纏っている。

今回の旅では「アダン」だけでなく「檳榔」と「蘇鉄」にもまた新たな認識を持ちました。
今までだってその2つの植物が描かれていることはわかっていたけれど、それが絵にどんな効果をもたらしているかが見えました。
「檳榔」の葉は鋭角だけど葉先が垂れています。そこに涼しい風と厳しい風に吹かれるという自然が見えます。葉の裏表も墨の濃淡で描き分けられ強い陽射しもわかります。「蘇鉄」は「檳榔」より葉が固いので葉先が垂れることはありません。が葉の裏表は同じようにわかります。
そんな葉の存在が一村の絵の魅力の1つでもあります。
ブーゲンビリアや浜木綿の花は南国らしさがあり、絵のまさに「華」でもあります。人気の作品などは少々サービス過剰気味であるかもしれません。

実は奄美には3泊したのですが、そのたった4日の間に展示替えがあって2回観に行きました。8割方入れ替わっていたので1.7倍ほど得したことになります。本当にラッキーなことでした。

これだけたくさんの一村作品をまとめて観る機会はもう無いかもしれません。

一村の終の住処にも行ってきました。
これだけの素晴らしい作品を描いていたことを彼の死後まで知る人はほとんどいませんでした。奄美では3年大島紬の職人として働き2年制作するという暮らしをしていたそうです。20年あまりそんな暮らしをする中で始めの何年かは個展を開いていたようですがほぼ発表することもなく制作を続けたのです。
終の住処を観て「寂しい気持になる人が多い」と聞きましたが私はそうは思いませんでした。
若い時からの作品を観ても一村の画家としての体質が求めていた物は南国にあったのだと思います。描きたかった植物にこの地で出会い思う存分描くことができ満足していたと思います。一村だって人間だから地位も名誉もお金も欲しいと思った時はあったでしょうが、奄美で絵を描くうちにそんな煩悩から少しずつ解き放たれたのだと思います。だから終の住処でどうやら夕飯の支度をしている途中誰にも看取られずに逝ってしまったようなのですが、それすら満足のうちだったんではないかと思います。

一村のことをこんなに考えて過ごせた3日間は私にとっても幸せの時でした。いつまでも今日の感性が風化しなければいいと思っています。

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